主足

【主足】そうじゃない。

垂れ流されている水音と、食器のぶつかる音。風呂上がりの湿った髪を肩にかけたタオルで撫で付けて、キッチンを横切った。頼んでもいないのにいそいそと働いている彼に「手伝おうか」とでも声を掛ければいいのだろうか。いつのまにか平然と居座るようになって...
主足

【主足】メリーメリーメロウ

※メリバ 空から見慣れた町が落ちてくる。赤と黒で構成された狭い空を、俺はきれいだと思った。崩壊した建物、散乱しているのは文字が掠れて読めない看板や、標識。時々見た事があるようなものもあったが、今はそんなことどうでも良かった。時間がない、そん...
主足

【主足】 you see all

おなかがすいた。 布団の中で意識が浮上してまず初めにそう思った。なによりも空腹をどうにかしてしまおうと、布団を引きずるようにしながらベットからおりてそのまま冷蔵庫を開ける。一旦扉を閉じて冷蔵庫に磁石で貼り付けられたメモを確認した。几帳面な文...
主足

【主足】ウニャア

足立さん、猫好きですか。その問いにどう答えたのかはよく覚えていない。別に興味がないと正直に答えたのか、まあまあ好きだよとでも言って適当に話を合わせたのか。どちらの答えを告げてもきっと彼は同じようにやわらかく笑っただろうから、自分がどう答えた...
主足

【主足】初夏素麺

この何もないド田舎の唯一のフードコート、中身はしょぼいけれど無いよりは幾分かましだ。そしてなんといっても、店内は空調が効いている。ジュネスはサボるのにうってつけで、気温が夏に近付いてきたここのところは、ほぼ毎日といっていいほど通い詰めていた...
主足

【主足】無題(朝)

「おはようございます、足立さん」 やんわり肩を叩かれて、ぼんやりと目をさました。眠気と肌寒さで、身体が思う様に動くまで時間がかかる。起こすならもっと力強く起こせと思いながら、声の主を探して枕に埋まった顔を持ち上げる。吸い込んだ朝の空気が冷た...