主足 【主足】お題「風邪」 ワンライ スピーカー越しにきこえた鼻をすする音に、寒いの、と訪ねた。そうすれば気の良い声がええそうですと返ってくるから、そっかあなんて適当に白い息を吐く。「ベランダ、出ました?」「うん。言われたとおり」「星が綺麗でしょう」 耳元に返ってくる... 2024.12.31 主足
主足 【主足】シャトワヤンス 灰皿の中に残ったのは、俺が燃やした最後の証拠の残りカスだった。携帯の電話帳に残ったのは、どうしても守りたかった彼の電話番号だった。 ひとり暮らしの目覚めには、そろそろ慣れてもいい頃だと思った。誰もいない部屋を見つめて、何の意味もないため息を... 2024.12.31 主足
主足 【主足】無題(車で海) 放課後、クーラーの効いた教室から出てしまえば太陽が容赦なく半袖から出る肌を焼いて、じめじめとした熱気はサウナを思い出させた。コンクリートの照り返しを睨みつけながら歩いていれば、こちらに寄せるように一台の車が停車する。「乗ってく? ちょっとド... 2024.12.31 主足
主足 【主足】この汚い感情が 熱が篭ったYシャツのなか背中を汗が伝う。じりじりと肌を焦がすような日差しと共に彼を「嫌いだなあ」と思った。春から堂島さんの家に下宿している高校生。それだけでなんとなく気に食わないと思っていたのに、これほどまでに自分の神経を逆撫でしてくる奴が... 2024.12.31 主足
主足 【主足】焦げた 鍋の焦げた臭いが鼻を掠めて、やってしまった、と我にかえった。急いで火を止めるも、鍋の底も食材も真っ黒に焦げ朽ちている。今月でもう三つ目だ。稲羽にいた時は調理法や調味料を間違えることはあれど、こんなに酷い失敗はしなかったのに。新しい鍋を買いに... 2024.12.31 主足
主足 【主足】すきなひと 「好きな人がいるんだけどさあ」 衝撃の言葉で、うとうとと微睡みに落ちようとしていたところを、強風で一気に吹き飛ばされた気分だった。「俺達、付き合ってるんですよね」 俺と足立さんはお付き合いをしている仲の筈だし、今だってベッドの上に隣同士で眠... 2024.12.31 主足
主足 【主足】う、嘘つき! 「ねえ、今すぐ会いたいって言ったらどうする?」 電話越しの声に、俺はまともな反応を返すことができなかった。放課後、友人達と別れて特に予定もなく帰路を歩いていた最中、突然かかってきた電話は足立さんからのもので、その電話の一言目が先の言葉だった... 2024.12.31 主足
主足 【主足】 see you all you see all のおまけ 彼の告白から、まだ数時間といったところだ。カーテンから透けた光がまぶしく寝返りをうつと、クローゼットから引っ張りだした布団で眠る彼の後ろ姿。彼は、返事は今すぐじゃなくていい、なんていいながら明らかに焦ってい... 2024.12.31 主足